心理療法にも、様々な技法があります。困りごとの種類によってターゲットが異なること、あるいは考えた人が仮定している心の仕組みが異なることが、このような多様化の大きな理由だと思います。ここでは、大きく2種類の心理療法の方向性を話してみたいと思います。一方は、具体的な問題を解消することを目的とした短期的な心理療法、もう一方は、問題も含めたその人の生き方などの全般的な部分まで対象にした長期的(治療期間を定めない)心理療法です。前者は、認知行動療法がその代表と言えます。後者は、精神分析や来談者中心療法などがその代表と言えます。
①問題解決型
多くの場合は前者を選びたい人がほとんどだと思います。短期的に問題が解決すれば、とりあえず今の状況を脱出できますから、かなり満足度は高いと思います。実際のところ、認知行動療法はその整理された技術体系から、研究も膨大な数が行われておりますので、医療との親和性が非常に高いです。手軽なワークブックも発売されていますので、かなり敷居の低い、取り掛かりやすい、治療を受けやすい技法と言えます。
私個人としては、認知行動療法の研修を何度も受け、自分なりにもお勉強しましたので、その理解は大きく外れてはいないと思いますが、いまだにピンとこない部分もあり、ここではあまり話せることはありません。ただ、これでうまくいっていない人、「良くなった」と感じていない人も多くお見かけします。このタイプの技法は、研究しやすくする(データ化しやすくする)ために、どうしても系統立ててパッケージングし、マニュアル化する必要があります。そのため、クライエント側がその流れに乗る必要性があります。また、治療者が主導するため、取り上げる話題の自由度はあまり高くなく、クライエント側の潜在的な不満になりやすいこともあります。
②自己洞察型
逆に、曖昧なぼんやりとした印象を持たれがちな、いわゆる“自己洞察型”の心理療法は、その自由度は比較的高めです。また、困りごとが特定の出来事に絞り切れていない場合、漠然とした困り感であった場合でも、それ自体を一緒に考えていくことができます。
しかし、治療期間の定めがないため、費用面ではかなり負担となることは否めません。週に1回で、8000円以上することがほとんどなので、一月で3万円ほど、年間で30万円ぐらいしてしまいます。また、自己洞察型は治療者の力量がかなり必要であり、これを明確に技法として提供できる場はあまり多くないと言えます。長期的に通うことになると、クライエントも覚悟が必要ですが、治療者側も、自分の技術と時間を、高い料金をもらって提供することへの度量が必要となります。このような度量を持つことは並大抵なことではなく、かなりの研修が必要だと考えます。この点で、心理療法を受けようと思った場合には、適切な研修を受けているかどうかが、選ぶ上での参考になるかもしれません。
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